大きくする 標準 小さくする


鯖の味噌煮の物語

投稿日時:2008/03/25(火) 07:59rss

今日と明日は、

鯖のみそ造りの物語を

谷口板長の鯖のみそ造り(鯖みそ)は試行錯誤を繰り返して、遂に完成しました。
化学調味料や防腐材を使わないで3日間手間暇掛けて煮込んで完成する
鯖の味噌煮の話しです。

 昔、谷口板長がお母さんに作ってもらった、そのときの味を再現した物なのです。
地元のこだわりの梅と味噌を使って、谷口板長のこだわりをお話します。

思い出の味を再現したい。
私は今年、平成19年で51才になります。ホテルの板前を張って26年、毎日お泊りくださるお客様に喜んでいただける食事を作らせていただいています。

せっかく八戸まで来てくださった皆様に、地元の食材を使った料理を食べていただきたい。そんな気持ちで毎日板場を仕切っています。
八戸の海産物はご存知のように、さば、いか、いわしなどが豊富で有名ですが、その一方で種類が少ないのが欠点でもあります。ですから素材は最高にいいのですが、どうしても料理の献立が限られてしまいます。地元の限られた食材でなんとかお客様に喜んで貰える料理はないだろうか?日々そんな事を考えていました。

そんなある日、ふと子供の頃に食べた鯖のみそ煮を思い出したのです。
私が子供の頃に食べた鯖のみそ煮は甘辛く、ご飯のおかずに最適でした。

焼き魚のように骨を取る必要の無い、骨ごと食べられる鯖のみそ煮は子供にも食べやすく、しかもその甘辛さがご飯にとても合うので大好きだったのです。

夕方まで遊んでお腹を空かして帰ってくる道すがら、家の方からかすかに鯖のみそ煮の香りが漂ってくると、夢中で走って帰ったものでした。

あのころの鯖のみそ煮を思い出した私はその味を忘れられずにいた私は早々板場で作ってみました。たしかに新鮮な地元の鯖を使って作る鯖のみそ煮は美味しくできました。しかし、あの、あの子供の頃に夢中になった母の味ではありませんでした。

※  目指すのは 
 「魚嫌いな子供も、美味しい!と骨ごと食べられ、ご飯がモリモリ食べる事が出来る鯖のみそ煮」だったが・・・・

  昔の味を早々母に作り方を聞きに行きました。
  しかし昔と今とでは時代が違いました。当時は石炭、薪ストーブ、七輪などで調理をしていました。冷蔵庫、冷凍庫の無い時代ですから安かった鯖を大量に買い、そんな昔ながらの調理器具の上に鍋をかけて時間をかけ、コトコト煮て作っていたのです。骨まで柔らかく煮えるくらい時間をかけて作っていたのです。

鯖の煮込み

  そうです、その日に購入してその日に仕入れた鯖を煮て、その日に出すような時間の掛け方とは全く違っていたのです。これはとても凄いヒントになりました。時間をかけて、手間暇惜しまず作る・・まずそれを基本にすることに決めました。
  家庭で圧力鍋を使って鯖のみそ煮を作られる方もいらっしゃいますが、それは家庭料理として何の問題もありません、骨まで柔らかくできますのでお子様にはいいでしょう。

  しかし、板前の私にとっては、それでは失格なのです。圧力鍋を使うとどうしても鯖の旨さが鯖から抜けてしまいます。圧力がかかると、鯖の脂肪分が身から全て出てしまうのです。
  時間をかけて煮ることによって、鯖の身の中の旨みはそのままで骨まで柔らかい鯖のみそ煮ができるようになりました。

鯖の味噌煮
  
  そこにもう一つの問題が出てきました。鯖のみそ煮の甘味料の問題です。昔は砂糖が高額で贅沢品だったため、チクロ等の甘味料など今では使用できない人工甘味料を使って鯖のみそ煮を作っていたのです。

  これには困果ててしまいました。どんなに高級な砂糖や味醂を加えて鯖のみそ煮を作っても昔の母の味には近づかないのです。確かに上品な甘味にはなるのですが、鯖の臭みが残ってしまいます。

  普通は梅干しと生姜を入れることで鯖のみそ煮の魚臭さを消します。どんな料理の本を読んでも、どんな料理名人に聞いても、この2つの食材で「鯖の匂いが消えます」と話すでしょう。しかしそれだけでは不十分なのです。昔母が作ってくれたあの鯖のみそ煮の味、あれは梅干と生姜では取りきれない魚臭さまで取り除いてあったのです。
  皮肉なことにあの人工甘味料が、この「魚の生臭さ」まで取り除いてくれていたのでしょう。
 
   私が目指したのは『魚嫌いなお子さんでも、美味しい!!と骨ごと食べられ、ご飯がモリモリ食べる事が出来る鯖のみそ煮』なのです。しかし昔使っていた人工甘味料無しではどうしても『魚嫌いのお子さんでも』がクリアーできない。梅干と生姜だけでは、魚嫌いのお子さんには食べてもらえないのです。
  魚好きのお客様には「こんなに柔らかくて美味しい鯖のみそ煮は初めて食べた」と好評でした。
  その時点で商品化しても、それなりに売れる自信はありました。でも私の一番のこだわりは、『魚嫌いのお子さんでも・・』と言うところだったのです。

  料理を生業にしていると、当然食べ物に関して色々な相談を受けます。そしてその相談の多くは「子供が魚嫌いで困る。特に青魚は体にも脳にもいいので食べさせたいが。どうしても魚臭くて受け付けてくれない。それに骨があると輪をかけて嫌がる。どうしたらいいだろうか?」と言うものでした・・
  家庭で作る鯖のみそ煮も、市販されている鯖のみそ煮も、鯖の臭みが僅かに残っています。魚好きの大人はそんな匂いにそそられるのですが、魚嫌いのお子さんには物凄く抵抗のある味と匂いになってしまうのです。
  どうしたら人工甘味料を使わずに、昔のような魚の臭みの無い鯖のみそ煮を作ることが出来るのだろうか?それを考える日々が続きました。

  毎日八戸で水揚げされる新鮮な真サバを買ってはコトコト煮て、味を見て、これは違う・・、お客様には提供しないでまかないに廻す日々がつづきました。
   しかしその内に、諦めの気持ちが強くなり、次第に鯖のみそ煮を作ることが少なくなり気が付けば5年間全く鯖のみそ煮を作ることから遠ざかってしまったのです。
  
  どうしても諦めきれない、しかし出来ない、作れない・・・この葛藤から遁れるために鯖のみそ煮を作ることを辞めてしまったのです。
  
挫折を乗り越えた あるヒント

すっかり鯖のみそ煮のことなど頭から出て行き、すっかり忘れた気持ちで過ごしていたある日、ふとテレビの料理番組を見ていたら、ある野菜の特集を放送していました。なにげに見ていたその時、急にひらめいたのです。答えが分かったのです『この野菜と鯖を一緒に煮込めば、出来る!』そう確信しました。煮込めば煮込むほど味に深みの出る野菜。しかもほのかな酸味があり、これが最後の魚の臭みを取り除いてくれる・・・・頭の中で何かが弾けました。

鯖の煮込み

通常は鯖のみそ煮で匂いを消すために使うのは、梅干です。そして梅干を大量に入れれば確かに臭みは消えますが。塩味が濃くなり過ぎてしまいます。

生姜は大量に入れると生姜の匂いが強くなりすぎて、鯖のみそ煮ではなく生姜煮になってしまいます。しかしこの野菜だったら大丈夫です。梅干、生姜、そしてこの野菜の三位一体が私の求めていた鯖のみそ煮を完成させる・・そう確信しました。

それからまた鯖のみそ煮作りが始まりました。5年間のブランクがありましたが、今度は絶対に出来ると自信を持って鯖のみそ煮に取り組みました。

思った通りでした。この野菜を使って煮込む・・正解だったのです。人工甘味料を使わずに最後の生臭みを取り除いたのです。この時こそ料理の面白さを実感したことはありませんでした。

しかし・・ここからがまた失敗の連続だったのです。95%は自分の理想としている鯖のみそ煮は完成したのですが、もうちょっと・・・そうですもうチョットなのです。
それは自分の心の中にだけ収めておいて、鯖のみそ煮をメニューに載せました。想像通り大好評をいただきました。それはとても嬉しいことでした、しかしどこかで引っかかっていました、心の何処かになにか納得できないものがあったのです。

それが8年前です。



八戸ニューシティホテル

谷口板長の 虎鯖 鯖のみそ造り の通販はこちらから

八食センター オンライン ショッピング おあがりやんせ はちのへ

まごころ ふるさと便

ご贈答に・・特に「お年寄り・・お子様のいるご家庭に」手間要らず!

八食センター メルマガ購読はこちらから

トラックバック一覧

コメント

名前:
Eメールアドレス:
コメント:
ファイル

画像の英字5文字を入力して下さい。:
パスワード:

会社概要

会社設立前は、八戸市内で旅館を経営 S53年株式会社 ホテル八甲を設立 S54年5月15日ビジネスホテル 八戸ニューシティホテルを設立 資本金一千万 代表取締役 谷口陽子 専務取締役 谷口幸博 常務取締役 谷口圭介 宿泊業務を中心に行い...

詳細へ

個人プロフィール

鯖を語らせたら1番目の男!そして仕事の合間に熱血バスケのコーチ!

詳細へ

バックナンバー

<<  2024年11月  >>
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

コメント一覧

  • :中林20系[11/14]
  • 平目のフライ
    • 瀬戸内育ちゆえに、子供の頃からご飯のおかずといえば魚でしたよ。割とご馳走だ...

  • :谷口 圭介[11/12]
  • 天然カンパチ
    • ヨコタさん・・・コメントドモッ!...

  • :ヨコタ[10/24]
  • 天然カンパチ
    • カンパチ、大好き! 2匹で300円なんて、東京では考えられないよ。...

  • :谷口 圭介[10/23]
  • スルメイカとアオリイカ
    • 中林さん・・コメントドモッ!...

  • :中林20系[10/22]
  • スルメイカとアオリイカ
    • 瀬戸内海の実家のほうではヤリイカやアオリイカです。スルメイカは見かけなかっ...

最新トラックバック

  • 第2回なんぶ鍋コンテスト from 南部太ねぎ|青森南部の南部太ねぎ販売 通販
    毎月22日「フーフー」言いながら鍋を食べる「鍋の日」条例! 今回、「なんぶ鍋コンテスト」を行い、南部町にしかない『郷土料理=ソウルフード』をこの鍋コンテストで発掘し、南部町を代表するオンリーワンの『なんぶ鍋』を町内外へ発信することを目的としております。 参加資格 ・南部町民の方なら、どなたでもOK。  ※御住所が確認できるものをご持参ください ・1人1鍋でご参加ください。 ・南部町産の地元食材を1品以上使用した特徴のある鍋にすること。(南部町産食材の数も審査の対象になります。) ※団体での申し込みは…
  • 「平目の棒すし」の製造工程を公開 from ベローズ・ラボ 「ベローズ案内人」
    京阪百貨店守口店で開かれている「東北展」に出展している経営者会報ブロガーの谷口板長さんが「平目の棒すし」の製造工程を公開しています。 「平目の棒すし」「虎鯖棒すし」の記事は社長の日記でも紹介しております。 >>>>>>> 社長の日記 社長の日記 三...
  • ”虎鯖すし”応援で逆に元気パワーを頂きました。 from 金型工場2代目会長の「経営革新」成功への日々を綴ります。古芝保治
    7日、近鉄阿倍野店9階催事フロアー・「東北六県味と技紀行」に”虎鯖すし”を出展されている経営者会報ブロガー谷口圭介さんにご挨拶に行ってきました。 ”虎鯖すし”の人気ぶりは、催事フロアーの一等場所にも現れています。
  • テストマーケティング研究所 from (株)京都工芸 タオルソムリエ 寺田 元 の日記
    こんにちは。【タオルはまかせたろ.com】タオルソムリエの寺田です。 青森県八戸に来ております。 異業種の経営者が総勢10名。 共通点はこの毎日書き続けている経営者会報ブロガーの方々です。 普段は全国におられるためネットがオンの状態でのつながりであったならば 実際にリアルにお会いするほうをオフ会と称し集います。 そして今回は人気ブロガーであります八戸ニューシティホテルの板長
  • 新刊『社長!「非常識社員」はこう扱いなさい!』店頭展開開始! from なにわの社労士発~「今日もこんなええことありました」
    新刊『社長!「非常識社員」はこう扱いなさい』の店頭展開が開始になりました。 昨日、FBで東京の神田啓文堂さんでの購入情報を得たのですが 大阪は今日からだと思ったので、朝一番で事務所の最寄りの書店である 紀伊国屋書店本町店さんにお邪魔したところ、まさに品出しの真っ最中でした! 書店員さんに「私の本なんです!どうぞよろしくお願いします!」とご挨拶。 そして新刊はこのよ